火のないところに煙を立たせていけ


アドベントカレンダー

こんにちは。拙者、汎用キャラに名前つけて内面や関係性を妄想して楽しむの大好き侍でござる。今年触ったゲーム Advent Calendar 2019の5日目の日記です。

みなさんは汎用キャラ、好きですか? 汎用キャラって何かというと、ゲーム内で固有のキャラグラフィックが用意されていなくて、例えば「ジョブ」あるいは「種族」と「性別」という大まかな属性ごとにきまったグラフィックで表現される傭兵のようなキャラクターのことです。ゲームによって、例えば同じ「男性戦士」という属性の汎用キャラでもキャラグラが数種用意されたりカラバリがいくつか選べたり、あるいは一種類しかないなど、実装上の特徴は様々です。近年のゲームではCVのカスタマイズができたりするものもあります。CVがあるとはいっても固有キャラではないので物語上のセリフを喋るわけではないですが、戦闘中の掛け声などに反映されます。

私が汎用キャラを好きになったきっかけは、多分小学生の頃にやったGBAのFFTAだと思います。このゲームでの汎用キャラには種族があって、種族ごとに選択できるジョブが用意されています。種族-ジョブの組み合わせによって固定のキャラグラが当てられており、名前はランダムでした。種族は、人間(若い男)、ヴィエラ(若い女)、バンガ(トカゲ・マッチョな男性)、ン・モウ(謎生物・フェミニンな雰囲気)、モーグリ(少年っぽい小動物)。当時より男の子キャラクター萌え異種愛萌え及び、「男の子は男の子と恋愛すべきだと思うの」を発症していたため、人間とバンガに偏ったパーティを作っていました。また、モンスターを狩って仲間にするシステムもあったので、 多くの人から忌み嫌われているモルボルに唯一寄り添える狩人(男)たん……(ニチャア) みたいなことをしばしば考えていました。要するに、究極的な「火のないところに煙を立たせる」行為です。

日本一ソフトウェアが出しているディスガイアやファントムなどのシリーズ、FFTやタクティクスオウガ、ととモノシリーズなど、魅力的な汎用キャラが用意されているゲームは私がプレイしたことがあるものだけでも数多くあります。そんななかで今日の題材は日本一ソフトウェアの名作「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団」です。

GW中に新しいゲームがやりたくなった

購入履歴を見返すと、今年の5/3にスイッチ版を買ったみたいです。セールだったこともありますが、私は日本一ソフトウェアについては深い信頼がありました。初めて日本一のゲームに触れたのは中学生か高校生の頃で、ファントム・ブレイブをプレイしたのだと思います。ディスガイアにも興味を持っていたのですが、ちょっとオタクみが強すぎる印象があり(ハイコンテクスト)暗黙的に忌避していたのだと思います。そこでみつけたファントム・ブレイブは、前から興味のあったディスガイアと雰囲気が似ている上、明るくてキャッチーなパッケージでとっつきやすい雰囲気でした。これは渡りに船ということで購入して、遊び始めたのだと思います。バトルシステムや自宅の箱庭(?)は独特でしたが、幅広いデザインの汎用キャラがいることもあり、かなり気に入って遊んでいました。それに何より、佐藤天平のBGMがプレイ体験をより良いものにしてくれていました。口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディと、ポップな絵面にマッチしたコミカルな浮遊感はとても耳に心地よいものだと思います。ちなみに、日本一で一番好きなゲームはソウルクレイドル(←公式がflashサイトだったのでamazonのリンク)で、これもかなり特殊なゲームシステムなのですが、2周目からの「主人公がみずから災厄となって世界をぶち壊していくルート」は最高に痛快です。

調べると、どうもルフランはタイトルにも使われているような「迷宮」探索系のゲームでした。いわゆるWiz系(Wizardry)、ファーストパーソンビューの3Dダンジョン探索ゲーム(DRPG)のようでした。自分がプレイしたことのあるゲームでいえば、ととモノやエルミナージュが近いです。その他の有名タイトルなら、世界樹の迷宮シリーズとかかな。これはきっと肌に合うだろう、と思って購入に至りました。けっきょく、100時間以上プレイしていますし、このゲームをかなり楽しんだと思います。

ルフラン、かなりしんどいゲーム

原田たけひと氏のキャラクターグラフィックからは想像もつかないぐらいグロ・ゴア満載の鬱屈としたゲームです。そして重要なことを先に言うと、汎用キャラの関係性を妄想する余裕はなかった。とはいえ、これは別にグロゴア描写がその障壁となったというわけではありません。

ゲーム中で探索と戦いを担当するのは汎用キャラですが、彼らはストーリー上で、魔女とその弟子によって作られた魔法人形です。人形素体に対して性別とファセット(職業みたいなもの)を設定して、いくつかの見た目から選んで「人形兵」を作り出します。最序盤は選べる種類が少ないですが、進めるにつれて新職やデザインのパターンが解放されたりもします。なので種類としてはそんなに少なくないのですが、大半はかわいい寄りのデザインでしたね。唯一ゴツめの男性デザインなのはピアフォートレス(防御特化)の男型ファセット。しかも、この人形兵たちには強くなるための転生システム「魂移し」というのが用意されています。レベルをリセットして、今までとは違うファセットのスキルを覚えたり、ステータスの底上げをはかるものです。やりこみにはたまらないシステムですが、問題点があって――転生前のキャラクターデザインを引き継ぐことができないのです。魂移しをするにあたっては、転生先のファセットのデザイン・CVのパターンから選ぶことになります。性別の行き来も可能ですが、これによって容姿から想起されるキャラクター像の妄想は非常に困難になりました。最終的な見た目をこれにするんだ、と決めてプレイすることもできなくはないでしょうが、何度の転生を経て、理想のスキル装備にして……というようなことを考えて臨むのはかなり難しそうに思えます。汎用キャラには性格やフレーバーテキストを設定できるので、それだけ考えると本当に妄想に適しているように思えるんですけどね……。どうせ誰に見せるわけでもないしなと思って、いい年して厨くさいフレーバーテキストを入れまくりました。でもキャラのリスト画面で見ると、フレーバーテキストは表示枠の問題で途中で切り捨てられてるので結構さみしい。

一方のグロゴア描写は、汎用キャラの介入する余地のないストーリーパートの陰鬱としたシーンはもちろん、汎用キャラの戦闘中もかなり濃厚な仕上がりになっています。例えばゴアヒットというシステムがあります。これは確率で発生する特殊な攻撃で、敵味方のどちらも、攻撃を受けたときに部位がちぎれる――部位をロストしてしまう、というものです。人形兵はゴアヒットを受けると、部位を失った痛みに悶絶し叫び声を上げ、最大HPが割合で減少します(なお、頭部をロストすると戦闘不能となる)。リョナ好き大歓喜の真面目にヤバいタイプの叫び声楽しむ聴くことが出来ます。部位をロストするほど能力が上がる、みたいなしんどいファセットもいます。ロストした部位を修復するには迷宮から帰還して代価を支払う必要があります。ちなみに敵にゴアヒットすることで割合ダメージを与えられるので、やけにHPが多い敵に有効な手段です(狙って出せるものでもないのですが)。

敵、しんどい

wiz系だと死ぬのは織り込み済みで、こまめに撤退しながら少しずつ行動範囲をひろげて……みたいなプレイのしかたがセオリーかと思います。「攻撃が通りにくい敵」とか「そのマップの平均的な敵よりも異常に強い、殺意の塊みたいな敵」とか「倒すとカルマ値(非戦闘ステータス、高いと探索に影響が出る)が上がってしまう敵」のようないやらしい敵がいるのはもちろん、造形からしてえげつない敵が多すぎる。


これはそんなにえげつなくもないですが……(麻痺)
いや麻痺っていうか、もっととんでもないのが多くて。つやめいたピンク色の乳頭をもった糞まみれ全裸パワー系(人型)とか、性的な悍ましさを感じさせるデザインのモンスターとか、得体のしれなさが恐怖を呼び起こす無機質系、深海魚のように醜く潰れた謎の生物など。繰り出してくる技も怖いし、有機物系は細かい書き込みが多くて視覚的グロの暴力が激しい。
あと、上の画像からもわかるように、戦闘に参加できるキャラはすごく多いので(画面には見えないサブもセットされてる。戦闘中に入れ替えできる)、それを考えるとやっぱり汎用キャラのデザインパターンがやっぱり少ない気がします。

ストーリー、しんどい

なんでこんなに暗いの……ってなります。fymartymは逆張りオタクの気質がありますが、それでもこれはやりすぎやろ……と言葉を失うレベルでしんどいストーリー。その舞台はルフラン市という不気味な町です。

本編の主人公的存在であるドロニア(魔女)はとにかく性格が悪くて、序盤は「なんでこんなやつの胸糞話を見なきゃいけないんだ!?」って思うレベルで理不尽・横暴がひどい。けれども進めていくにつれ、性格が悪いながらもだんだん行動理念が明らかになってくる。それに何しろルフラン市民もヤバイやつ揃いで、そんな中でやっていくには多少図太くないと護身もままならないであろう、とも感じる。そうやってプレイヤーがドロニアに対して好意を持ち始めると、ドロニアが報われない展開が怒涛のように押し寄せてくる。1秒のカタルシスも許されないような、どん底に突き落とされる感覚が続く。ドロニア自体は強気なものだから、哀れにさえ思えてくる。まるでピエロ。

そして実際に、ドロニアは哀れなキャラクターなのですが、本編クリアしたときは泣きました。演出ずるいよ、しんどいよ。

人間の醜さにスポットを当てているえげつないストーリーに加えて、「ウソのエンディング演出」みたいな騙しの要素も本編をしんどくさせている。逆張りオタクなくせに純粋なfymartymは、「え、なにこれバッドED引いた!? もしかしてカルマ値上がりすぎてた!?」みたいにビビって一回ロードし直しました。みなさん、クリティカルシンキングを大事にしましょう。

あと百合要素がまぁまぁ濃い。百合自体は構わないのだが、個人的には、ドロニアがずっと特別な感情を向けているエキセントリックな少女・イサラのキャラ造形すべてが受け付けられない。好みの問題だと思うけど、これはマジで嫌い。喋り方、そこからにじみ出る性格、容姿、全部無理です。本編後を全クリアしたらまた印象が変わったりするのだろうか。

ダンジョン、しんどい

ドロニアたち固有キャラの紙芝居で進むルフラン市のストーリーのほか、人形兵が探索する迷宮ダンジョンの中でもストーリーが繰り広げられます。人形兵自体はなにも喋らずに淡々と探索攻略をすすめるのみですが、攻略するために迷宮内に暮らす人々・事象とのやりとりが発生します。これがまた、濃厚なえげつなさ。特に序盤~中盤はルフラン市の狂いっぷりもまだそれほど頭角を表していない時期。そんな中迷宮探索をしていると、背中に何かが這い回るような不気味な感覚に何度も襲われることになるのです。

迷宮の1つ目「深碧のカンパニュラ」は、薄暗い緑がかった洞窟風な見た目と適度なトラップ配置で、あぁDRPG初手ダンジョンとしてはこんな感じだよねという入門的雰囲気が漂う迷宮。落とし穴で死にかけるのも、はからずも強敵エリアに踏み込んでしまうのも、あるあるだ。薄気味悪いストーリー展開も、まぁ得体のしれないダンジョンってこんなもんだよね。という風に感じられるくらいで、まだそれほどヤバそうな気配はない。

2つ目の「アストルム王国」は、一見かわいらしい世界だが調子の外れた明るさのBGMが不穏な気配を醸し出している。モンスターもまだあからさまにヤバげなやつは出てこず、ストーリーも表面上は勧善懲悪のように思える。しかし丁寧にテキストを追いかけると、なかなかダークな展開であることがわかる(私はほぼ読み飛ばしてたので他人の感想を見るまで全然気づかなかった)。

続く3つ目「地下帝国メルム」で、ほとんどのプレイヤーは恐怖体験をするはずだ。視覚的にも能力的にも強敵となる つやめいたピンク色の乳頭をもった糞まみれ全裸パワー系(人型) に対峙するのである。たどり着いた時点ではほとんど討伐できないし、できたとしても人形兵の旅団はかなりの痛手を負うことになるはずだ。しかも、一度に2体以上でてくることもある。これが絶望。そして、恐ろしい敵からは逃げられても、この迷宮で突きつけられる人間の醜さからは逃れられない。かなり後味の悪いイベントをこなして、このゲームなんか暗くて怖いなぁ……と自覚し始めるだろう。

次の「新緑のフェーヌム」は先のメルムとは打って変わってやや心の落ち着く情景が広がっている……と思いきや、ここもどうも様子がおかしい。それでも脳死でテキスト送りしていればそこまで病むこともない感じ。

5つ目の「三領主の塔ウンブラ」では、いよいよもってこのゲームの闇に背筋を凍らせることになる。はじめて一歩踏み入れたときには、わかりやすい煩悩・飽食・色欲の演出が却って俗っぽく、「あぁはいはい、日本一の変態要素ねw」みたいな気持ちで、一種のファンサービス・ギャグダンジョンかなと勘違いしてしまった。迷宮が「三領主」を冠しているだけあって、その俗っぽいダンジョンは3つのうちのあくまで一面でしかない。途方もなく長いダンジョンの最奥で、メルムの恐怖モンスターとイベントに匹敵するつらさが待っている。

という感じで5つのダンジョンを紹介したけれども、これはまだ折り返し地点で、ルフラン市のストーリーもこのあたりから闇が深まってくる頃合いだ。

本編後、しんどい

本編後を全クリアしたらまた印象が変わったりするのだろうか――と言ったように、本編クリアではゲームは終わらない。感動の本編後は、本編EDで明らかになった災厄をとめるためにドロニアの弟子だったルカに主人公をバトンタッチして、裏ストーリーが始まる。このルカは事情によりイサラのような要素をもっているので、これもやっぱり個人的に好きになれない。でも、私にとってはそこはそんなに問題ではなくて、この裏ダンジョンのボスを倒すのがとんでもなく難しいので、真クリアまでにはいたらず途中で放置しているような状態です。そのうちクリアできればいいけど……。

ちなみにドロニアやルカを主人公という風に表現しているのですが、実際は「プレイヤー」が主人公です。身動きして物語に干渉するわけではないですが。

ルフランのめっちゃいいシステムについて

というわけでルフランはしんどい(褒め言葉)の嵐のゲームですが、めっちゃいいシステムがあって、それが壁壊しです。DRPGのダンジョンは迷宮、要するに迷路みたいに入り組んでいて、目的の場所に向かうまでかなり歩数を費やす必要があったりします。でもこの壁壊し、その名の通りダンジョンの中にある壁をぶち壊すことができるシステムで、これを使えば、隣り合っているけど壁によって移動が阻まれていた場所にも一歩でたどり着くことができるようになるのだ。

DRPGはマップを埋めるのも醍醐味で、初見のマップは一歩ずつ(トラップ引きながらでも)踏破していくのが確かに基本だが、もう埋めたマップの移動は煩わしいものである。そのゲーム上の面倒臭さを気持ちよく解消してくれるこの壁壊しシステム、マジで最高。